症例研究会160926
依存心が強い方のADL低下を防ぎ維持向上させるための1アプローチ
平成28年9月26日
- 症例
- 76歳 女性 無職
- 主訴
- 左片麻痺 歩行困難 ADL低下
- 病名・症状
- 急性硬膜下血腫(Br-Stage左上肢Ⅱ‐2、左下肢Ⅳ-2) 胸椎12番、腰椎1・2番圧迫骨折
- 目標
-
・ADL低下・歩行困難
【問題点】
① 依存心が強く、行えること(起居動作、補助具使用立ち上がり動作、補助具使用立位保持動作)も「できない。助けて。」と介助を求める。
② 座位時間が長いことで腰臀部痛がある。
③ 左股関節の関節可動域制限(再評価時屈曲100°、外転15°、伸展10°)、左足関節の背屈制限(再評価時10°)があり、補助具を使用した立位保持に困難がある。
④ 左上肢の関節可動域制限(再評価時肩関節屈曲100°、外転90°、肘関節伸展30°)があり、寝返り動作、補助具を使用した立位保持動作に困難がある。
【解決策】
① 施術の度に、動作を指示する時には意欲を引き出す声かけを行い、目的の動作が行えたら褒めるを繰り返して意欲低下を防ぐ。筋肉と腱を伸ばされることに過敏なため、マッサージ・ストレッチを弱めに行う。
② 痛みの訴えが強い時は軽めの施術を行って、痛みの訴えが軽減したら腰部の可動域を広げる関節可動域訓練を行う。
③ ④ マッサージ・ストレッチで筋肉と腱を伸ばされることに対して過敏なため、左下肢は自動介助、左上肢は他動で関節可動域訓練を行う。
【結果】
① 「できない。助けて。」と介助を求めることがなくなり、安定して起居動作、補助具使用立ち上がり動作、補助具使用立位保持動作を行えるようになった。
② 施術開始当初からローテーション・ブリッジは行ってきた(痛みが強い時は行わない)が、平成28年2月10日以降、痛みの訴えがなくなり、補助具を使用した立位保持時間が安定して1分を保てるようになった。同年6月6日からダブルニーリフト・ダブルレッグプレスを追加して、より腰部の可動域を広げる為に関節可動域訓練を行い腰痛予防も行っている。
③④ 9月26日の評価時は、左股関節の関節可動域(屈曲100°→100°、外転15°→20°、伸展10°→0°)、左足関節の背屈可動域(10°→15°)、左上肢の関節可動域(肩関節屈曲100°→90°、外転90°→60°、肘関節伸展30°→50°)と、左下肢は股関節伸展を除いて維持か改善がみられたが、左上肢は可動域制限が強くなっていた。
【考察と課題】
ADLの中で行えることと行えないことを見極めて、必要のない介助をしないようにしてきたが、ひとつひとつの動作を起こすまでに時間がかかり、限りある時間内で必要な施術を選んで行っていくことは困難があり不足した内容はあった。
施術開始当初から前方介助による歩行訓練は行ってきたが、側方介助で手すりを使用した歩行訓練が行えるとは想像もしていなかっただけに、本人の意欲と機能を落とさないで訓練を行ってきた成果はあった。
課題としては、症例研究会に向けてあらためて関節可動域測定を行った結果、股関節伸展可動域が狭くなり、両下肢のSLRが40°、膝関節伸展時の足関節背屈0°と可動域制限があることがわかり、立位保持時の姿勢と歩行時の歩容に影響が出ることがあげられる。
また、左上肢の各関節可動域制限が強くなっていることで、衣服の着脱に影響が出ることがあげられる。
痛みで拒否が出ないような可動域改善のための施術をどのように行えばよいか、今後の課題である。